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本当に大切なものは見えない

古いフィルム・カメラで、ありふれた身の回りを撮っています。日常の中の一瞬を捉え、読み解く写真になっていれば・・・

この差は何だろう?

写真家の名前は知っていた。
プラハの春を踏みにじったソ連の戦車の写真を、カメラ雑誌で見た記憶がある。
その程度の知識しか持ち合わせていなかった。

3年ほど前、その写真家の展覧会が 東京であった。
すごい衝撃を覚えた。
それから、クーデルカの写真を見るようにしている。

機械としてのカメラは進歩し、誰もが綺麗な破堤のない写真を撮れるようになる。
技術的には、彼より上手な(うまい)写真をとる人は 多いだろう。
でも、彼独特の視点は、真似できない。
余人をもって代えがたい、いい写真を撮る。
クーデルカ
THAMESA&Hudson社発行のPHOTOFILEシリーズの一冊、クーデルカに載っていた写真。
25番目の写真、1974年スペインで撮影したとしか記載されていない。

クーデルカは 「プラハの春」を阻止するため進入してきたソ連の軍隊(1968年8月)を撮影し、
匿名で西側のメディアに送る。
その後、ジプシーの撮影許可を得て西側へ出国、(周りの助言を受け)、
帰って牢獄に入る危険を避け、亡命する。
イギリスを希望するが 果たせず、フランスに亡命。
カルチェブレッソンとの親交が始まる。

この写真は、スペインを放浪し撮った一枚だろう。
1974年は、まだフランコの独裁政治が続いていた時代である。
スペイン内線は、1936年ごろ始まっているので、この老婆の年齢を60歳台と見れば、20歳代の出来事となる。
馬に乗る男たちは10歳くらいの少年だったろう。
スペイン内戦をキャパは、人民戦線(共和国)側に立ち、撮影していた。
ユダヤ系ハンガリー人のキャパにとって、祖国は危険。離れざるをえない状況だった。

クーデルカも祖国を追われた身、どんな思いで撮影していたのか・・・
2014年、それまで撮りためた写真をまとめ、Nationality doubtful という写真展をシカゴで行っている。
また、同名の写真集を出している。
クーデルカの写真にはタイトルがついていない。
撮影場所と撮影年と月しか書いていない。
なんでもない光景も、
Nationality doubtfulの旅人・クーデルカのカメラの眼は、鋭く見抜き、一枚の写真にする。
これどう?とDoubtfulな視線を投げかけてくる。
何に悲しんでいるのか? 彼の視線は常にQuestionに溢れている。
この花束はなに? どこへ行く?
馬に乗る男性二人は どこへ向かう?
この一枚の写真には、フランコ独裁政権の末期のスペインが記録されている。
単なるデーターとしてではなく、時代の精神として。
写真は、撮る人だけでなく、見る人の知性、感性も試されている。
それを感じとる感性は、その人の知性、想像力、他者への思いやり、後天的に培われたものだろう。
何も知らない人に、この写真を見せ、「どう思う?」と聞いても、判断つかない人が多いだろう。
なんだ、こんな写真、下手だなぁと 思う人だって居るだろう。
それが、写真。

小生は凄いと思っている。
そして せめて、すこしでも近づきたいと・・・思うけど。

その場に潜む精神を、意識し、カメラの眼で切り取ること、
甘っちょろく生きてきた老人には無理か。
老醜を晒すようなものかもかも知れません。
平羅新市街983-96
平羅新市街983-103 Ⅱ
平羅新市街983-100 Ⅱ
平羅新市街983-98 Ⅱ
平羅の新市街地で撮ったもの。
この新市街地の雰囲気でも感じて頂けたら、いいのですが。

愧ずべくは 明眼の人を・・・・
もう一人 写真家がいた。
セバスチャン・サルガド 彼もブラジルの軍事政権に否を唱え、フランスに亡命している。
年のころはクーデルカと同じくらい 70歳後半だと思う。
二人とも体制順応型ではない。
商業資本からも離れている。

世界には 明眼の写真家もいるんだ、と思えば、それだけで、こころ強い。
写真を 撮っていこうという気になる。



 



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もう一年白黒フィルムで遊んでみるつもりでいる。

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