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本当に大切なものは見えない

古いフィルム・カメラで、ありふれた身の回りを撮っています。日常の中の一瞬を捉え、読み解く写真になっていれば・・・

横須賀 三笠公園  「西馬音内盆踊り」

未だ空に明りが残っている午後6時ころ、
踊りが始まる。
西馬音内盆踊り-10
左手より編み笠を被った、艶やかな女性が現れる。
すると右手から、引きつかれたように人が列をなし、出現する。
顔は判らない。冥界から現れたか・・・?
西馬音内盆踊り-11
編み笠の女性が、さっと腕を上げると、
憑かれたように一団の手も上がる。
遠くから歌声が響いてきた。
西馬音内盆踊り-12
踊りが始まる。
西馬音内盆踊り-13
ひとしきり、輪になり優美な踊を見せていたが・・・・すぐに、消えていく。
西馬音内盆踊りDSC09385

ほんの10分程度の出来事だった。
これは何だろうか?
若いころ観た映画、ベルイマンの「第七の封印」を思い浮かべていた。
主人公は十字軍に参加し、もうすぐ帰国の途にある城主。
死神と主人公の攻防と対話で話は進行していく。
最後の場面は、死神に率いられた一団が、踊るように従っていく・・・
いやそうでもあるまいと首を振る。
先頭の編み笠をかぶった女性、
顔こそ見せないが、立ち居振る舞いは 優美、
死神のはずはない。
これは、亡き人への追憶だろうか?
-------------------------------
遠くで読経の声が響く。
灯籠流しが 始まったようだ。
---------------------------------
花が咲き、そして散るように 人生は進む。
これは 万国共通の思いのようだ。
死者の墓に花を手向けるのは、ネアンデルタール人も行っていたという。
しかし、捉え方、感じ方は、その民族の歴史的な試練、環境で異なる。

我々はどうだったか?
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
と、眺め詠嘆するだけ。
わが身が移っていくこと、逆らうことをしない。
受け身の対応。
あるいは、
ねがはくは花のしたにて春しなん そのきさらぎのもち月のころ
と歌う。
西行信仰が起こる。
できれば、西行のようになりたいと・・・

「第七の封印」の主人公は、死神とチェスの勝負をする。
譬え、負けが決まっていても。
運命に対し、受け身ではなく、主体的態度を保持している。
ここが違う。

日本人のエトスは、自分の殻に籠もって、身の不幸を嘆くことにあるのかもしれない。
綺麗な花の写真をブログに載せ、 
「だれも、純粋な私の気持ちを理解してくれない。
それでも 私は あなたのことを思っている・・・・」
など詩ともいえない内容のコメントを書く人がいる。
一種の「お涙頂戴」、 受け身的ひがみの極地かもしれない。
共感できないなぁと思う。
ロダンなら、浅薄なる幼稚と 切り捨てるだろう。
折角撮った美しい花まで、安っぽく見えてしまう。

小生は、たとえ敵わないと うすうす勘づいていても、
抵抗し、チェスの勝負にかける「第七の封印」の主人公の主体性に共感する。

この怪しくも優美な「西馬音内」の踊り、何なのだろう?
お涙頂戴の一場の劇には 思えない
魅了されながらも、未消化の思いが、頭の中をぐるぐると 駆けめぐっていた。

灯籠流しも、終わりに近づいてきた。
夕闇が更に深くなっていく。
突然、西馬音内音頭が流れてくる。
踊りが始まっていた。あわてて、踊りの会場へ駆けつける。
再び冥界から 忽然と踊り手の一団が 面前を通り過ぎていく。
西馬音内盆踊り-1
音頭の歌詞は、秋田、西馬音内の方言で 意味不明なところが多いが、
ちょっとエロチックで直截的な言葉もちりばめられているようだ。
エロチックこそ現世の特質、冥界にはないだろう。
歌詞に猥雑な言葉を込めるのは、冥界より帰ってきた亡き人に 
少しでも長くこの世に居てもらいたいという 願望の現れかもしれない。
しかし、2回目の音頭は、聞き取れない。
仏教用語が混ざっていたように感じるが・・・・歌詞を聞き取れない。
西馬音内盆踊り-2
動作はゆっくりだが・・・手の振り、足の運びは大きくなっている。
西馬音内盆踊り-3
これは、なに?
西馬音内盆踊り-4
亡き人を迎えに来た現世の人だろうか?
それなら、顔を隠す頭巾は必要ないだろう。
まるで歌舞伎の黒子。
西馬音内盆踊り-5
背景の樹が松なら、ここは能舞台になる。
薪能??
黒い覆面は能演者の仮面に似る。
神の化身の象徴だろうか?
西馬音内盆踊り-6
踊っているのは、現世の人間?、冥界からの亡者?、それとも神の化身か。
編み笠で顔を隠した女性の羽織る端縫い衣裳は、豪華で美しい。
西馬音内盆踊り-7
ひとしきり 踊ると、全て冥界に消えていく。
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あの美しい編み笠の女性は誰だ?
西馬音内盆踊り-15
青春時代は、すぐに過ぎ去る。 
美しい時は一瞬。
その瞬間を逃すな。
めいっぱい燃やし、楽しむべき。


連想が、「第七の封印」より十字軍に蹂躙されたペルシャに飛ぶ。

ルバイヤートの一節が、心をよぎる。

今日こそわが青春はめぐって来た!
酒をのもうよ、それがこの身の幸だ。
たとえ苦くても、君、とがめるな。
苦いのが道理、それが自分の命だ。

十字軍に侵略されたペルシャ。
その時代を生きた大学者オマル・ハイアームの著した四行詩ルバイヤート。
数学者、天文学者として、おそらく当時の世界では、随一の知性の持ち主でもある。
ルバイヤートを読んだのは、50年くらい前のことだが、長く心に残っている。
オマル・ハイアームの絶望的ともいえる、観察眼に感銘していた。
11世紀の昔、すでに一人称の眼(主観)ではなく、三人称の眼(客観)で、世界を見つめている。
やはり科学者だろう。
絶望的だが、怪しくも美しい・・・・調べの詩。

もともと無理やりつれ出された世界なんだ、
生きてなやみのほか得るところ何があったか?
今は、何のために来きたり住みそして去るのやら
わかりもしないで、しぶしぶ世を去るのだ!

西馬音内の盆踊りに、青春時代に読んだルバイヤートの、
ペルシャのサーキー(酒姫)の艶姿をだぶらせていたのかもしれない。
豪華で美しい端縫い衣裳に惹かれるのは、
この世の快楽を味わい尽していないとひがむ、老人の願望だろうか?
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  1. 2016/07/28(木) 08:45:29|
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