昔、森山大道の「アクシデント」というシリーズが、朝日カメラに載っていた記憶がある。
1年間続いたシリーズだったと思う。
その一つに、警察庁の交通安全のポスターを、マクロレンズで接写し、部分部分を拡大し、アレた画像にしたものがあった。
朝日カメラだったと思うが・・・カメラ毎日だったかも・・・そこは不確か。
しかし、記憶の底には、その画像が残っている。

三日ほど前、散歩して撮影した一枚。
五反田から高輪台へ長く続く坂で撮影。
撮りつくされた構図、新規性、新たな視点などどこにもない。
白から黒まで豊かに(滑らかに)つながるよう、明暗とトーンを調整する。
これが小生の好みのトーン。
何の面白味もないなぁと思う。
これは没、しかしアクシデントみたいに処理したらどうなるだろう?
実験だと思い、Photoshop elementを動かしてみた。(エプソンのフィルムスキャナーに同梱されていたソフトです)
白と黒の対比を明確にし、中間トーンのコントラストを上げる。
大分、森山大道の調子に近くなる。

非日常性が出てくる。実際の光景では、こうは見えない。
それが面白いと、真似ることはできても、
長続きはしない。写真世界を表現/創造できていないから。
技術(テクニック)は真似ることができる。
それは職人の世界。
しかし、テクニックだけで、世界は捕まえられない。
知性がなければ、次の写真世界は開拓できない。
森山大道は、かなりの読書家でもある。
ものごとの本質を考えようとする志向がある。
それも、粘り強く。
そのあたりが、テクニックだけの職人的写真家と、森山大道の差だろう。
しかし、その差は、隔絶した壁のよう大きいとも感じる。
アクシデントのように 一部を取り出し、拡大処理する。

この辺りは、デジタルになったメリット。
アレ・ボケの写真ができる。

荒れた都会の風景が出現する。
広角レンズで撮影したが、一部を拡大したことで望遠効果を生む。
「アクシデント」になったか? 狙う眼が違う。
でも、勉強にはなるだろう。

クーデルカも、20代のアマチュア時代 Experimentと称し、ローライフレックスで撮影した一枚のネガから、トリミングし、様々な写真を切り出している。
これは、クーデルカのトリミングに似てきた。
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技術は対価を払っえば教えてもらえる。
教えてくれなかったら、そっと盗めばいい。
しかし、教えてくれるものがなく、盗むものがなくなれば、そこで成長はストップする。
更に成長させるのは、本人の知性しかないだろう。
森山大道、クーデルカに、知性の輝きを感じている。
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- 2016/03/07(月) 10:58:08|
- 写真の技法
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