自分でフィルムの現像をしている人は少ないでしょう。
メトール、ハイドロキノン、フェニドン、亜硫酸ソーダ、ホウ砂、炭酸ソーダ、ブロムカリ・・・・
それらを調合し、現像液を作って使用していますが、
薬品(試薬)を購入していた神田の守随彦太郎商店が、店をたたんでしまった・・・
途方に暮れています。
ヨドバシ・カメラへ行ってみても、現像液を調整する薬剤の棚は、段々と寂しくなってきています。
が、まだ、大丈夫。
Retro400Sのフィルム現像条件を掴むため現像実験をしています。
結果を纏めグラフ化してみました。
備忘録として載せておきます。
化学の教育を受けた人なら、そのグラフから、色々と情報を読み取れるでしょう。(小生が、何を考えているかも・・・含めて)
興味のない人には、退屈なデータです。

実験のため、フィルムフォルダーを作りました。ISO:400で撮影したフィルムを暗室(ダークバック)で8cmの長さに切り、フォルダーに装填、最大6片のフィルムを現像できます。現像温度一定の元、暗室で一定時間ごとに取り出し、停止、定着、水洗し、ネガを作ります。

乾燥しネガは エプソンのフィルムスキャナー F-3200で 画像を取り込みます。
コダックのグレースケールが写っている範囲の濃度を取り出し、測定します。
今、指標にしているのは、一番銀塩が濃い部分の値と Rangeの値です。
レンジ(Range)の値が大きいほど、階調性は高いフィルムと判断していますが・・・・
階調性が高いからいい写真になるというわけでもありませんが、まずは、高くできる現像液組成の開発を優先させています。

赤い線は、D76現像液濃度を変化させて(ただし、亜硫酸濃度は一定)得たデータ。濃度に対し0.5~0.6次反応で現像は進行しています。さて、どんな反応機構を仮定したらいいでしょう?
仮定したら、それを確かめる実験を考える。
こうに違いないと確信しては駄目。
「確信は嘘より危険な真理の敵」
実験を工夫し、仮定が正しいか確かめる・・・予期せぬ結果(ネガティブデータ)なら、それを元に、再び、機構を仮定する・・・サイエンスとは、デーモンが闊歩する暗闇を、理性の松明を掲げ一歩一歩すすむようなもの。サイエンスは、デモクラシーの娘です。

アレニウススポットをしてみました。反応次数と活性化エネルギーが判明すれば、任意の濃度に薄めた現像液でも、温度と現像時間の関係を計算で推算することはできます。
ここからは、品質の向上を目指すべき。

ハイドロキノンの影響を調べています。
実験は続いています。
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現像の実用書は 沢山出ているようですが・・・ 反応機構を含めた批判に耐える書物となると菊池真一教授が著した「写真化学」(共立全書)になる。出版は初版が昭和27年5月20日。それから 大した進歩もないようだ。
実用書、現像指南書を読むと、首をかしげたくなるような記述もある。
参考にした文献をインデックスに付けるか、エビデンスをハッキリと示してくれればいいのに・・・・と思ってしまう。
「言ったが勝ち、嘘も百回唱えれば真実になる」というわけでもないだろう。
薀蓄を語りたいのだろうが、これ、この人の憶測か伝聞だろう・・・・・本当か?と思わず眉につば。
当時と今では、分析の方法と精度はけた違いによくなっている。表面分析は各段に進歩。液中の成分分析も簡単になっている。
品質向上のためのデーターを、フジフィルム、コダック、アグファ、コニカなど、フィルムを作っていた(いる)会社は蓄積している。
現像のメカニズム・反応機構の解明はかなり進んでいると思う。
ノウハウとせず、公開してほしいものだと思う。
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- 2015/10/22(木) 11:00:09|
- 写真の技法
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