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本当に大切なものは見えない

古いフィルム・カメラで、ありふれた身の回りを撮っています。日常の中の一瞬を捉え、読み解く写真になっていれば・・・

林試の森にて

江戸時代 西洋絵画が出島を経由し日本にもたらされる。
それを見て日本の絵師は、驚いたのではないかと思う。
空間の表し方が それまでの日本の技法と異なっていた。
どのようしたら、このように空間を表現できるのかと、
西洋の遠近法を学び、それを取り入れるようとした。
幕末に近くなると、カメラがもたらされる。
そして、これが、見ているものを、
そのまま細部まで間違いなく記録する装置かと合点する。

Photo Graphを「写真」と日本語に翻訳した。
もちろん、光画と訳した人もいたが、
「写真」という言葉の方が、日本人には受けが良かった。

林試の森1302#2-15
写真は、3次元の空間を2次元の平面に記録する。
見たものをそのまま写しているかというと、そうでもない。
しかし、心の中で画像を認識し、そこに、なにが映っているか了解する。
その瞬間、写真は「記憶の鏡」となる。
林試の森1302#3-6a
でも白黒の写真は、みたものそのものの記録にはなっていない。
細部まで記録されているとしてもカラー情報を欠いている分、抽象的だ。
記憶の鏡となるためには、具体的なものがよりよいと、
カメラが発明されてた初期の時代から、すぐにカラー写真へ関心(開発)が進む。
20世紀初頭にはカロタイプのカラー写真(ポジだった?)が発明されている。
林試の森1302#3-2
フィルムの感光域も、より長波長への開発が進み、やがて赤外線フィルムも出てくる。
林試の森1302#3-4
赤外光を人間は見ることができない。
可視光をカットしたフィルターで撮影された赤外線写真は、
見たそのまま撮る(記録する)という概念から外れる。
見えなかったものを、見えるようにして、その奥に潜むものを見たいというのが人間のエトスなら、
これも写真。
林試の森1302#3-9
一度「写真」という言葉が日本人の心に定着すると、
今度は、その言葉に支配されてしまう。
写真という語感から、(真を実として正確に写し取る。)
真実を写すもの・・・と心の底では思ってしまう。

人間の目では はっきりと捉え切れないものがあると・・・思う、あるいは思いたい。
それを捉えたとする心霊写真が出てきたり、(デジタル写真になってからはなくなったと思う。)
写真は「写心」だと言ってみたり、
この写真は(私の)心象風景を写したもの・・・と言いたくなる。

カメラは自然科学の発展を基礎に、技術開発によって生み出された科学機器。
科学技術の結晶。
しかし、まだ人の心の原理は解明されていない。
それが撮影できるか否かもわからない。
その原理が解明されない限り、
残念ながら、カメラに、心を写す機能を、組み込むことはできない。

カメラにできるのは、見たものを写真に撮る(記録する)こと。
それは、自分の「記憶の鏡」になるが、同時に、人に伝えたいことにもなる。
スマホで撮った画像を、すぐに友に送りたくなる。
研究用カメラは、銃弾が打ちこまれた瞬間を高速度撮影で捉えたり、
探査衛星に備えられたカメラは、遠い小惑星の表面を撮影し、地上にその画像を送る。
用途により必要な機能は決まり、用途によりカメラは作られている。
その機能の限界まで利用するのが、写真を撮ることだと思う。

カメラがあまりにも発展し、誰もがきれいな写真を撮れるようになる。
個人的な独自の写真表現となると・・・なかなか難しい。
みたいもの、知りたいもの、記録しておきたいもの、
それをカメラで捉えようとするのだが、
写っているものは、あくまでも現実のコピーに過ぎない。

誰が撮っても大同小異じゃないかと思うが、
しかし、じっとその写真を見ていると、
撮る人の志(こころざし)の高さ、知性、熱意(腹に一物があるか)が 見えてくることがある。
撮ったつもりが、結局、撮る人が被写体に試されている。

写真はやっかいにして面白いと思う。

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  1. 2020/08/22(土) 12:19:28|
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未だフィルムカメラの沼から抜け出せない。
もう一年白黒フィルムで遊んでみるつもりでいる。

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