日本でのネーミングはミュー(μ)というカメラだった。
米国では ∞Stylusというネーミングで販売されていた。
μという記号はギリシャ文字、長さの単位で、ミクロンと読めば、千分の1mmの長さを指す。
素粒子の世界ではミュー粒子をあらわしている。
オリンパスという会社の名前からしてギリシャ風。
なかなか上手いネーミングだと思う。
米国向けのネーミングは"∞Stylus" 欧米の知識人だったらぐっとくるネーミングだろう。
哲学、宗教、数学、物理・・・・思想の根幹に関わる言葉で構成されている。
有限の数字を無限で割ると、答えは無限に小さな数すなわち0(Zero)に達する。
Stylusとは、鉄筆などの先端を持つものを指す言葉、レコード針などを指すとき使う言葉。
"∞Stylus" というネーミングは、無限とZero、無限と無(Zero,空) というイメージを喚起させる。
無限に小さな変化が函数に及ぼす影響(Limit 計算式)をニュートンは考え、開発した数学が微分積分。
無限に小さなゼロは∞という概念と結びついている。
この世界は無限に大きいのか?始まりのゼロ(Stylus)はあるのか?
この概念を軸に欧米の哲人、宗教思索家、数学者、天文学者は、議論を深めていったようにも思える。
真空(なにもない空間)などあるはずもない。自然は真空を嫌うと古代のギリシャ人は考えた。
点と線、コンパスによる曲線・・・・無限に細い線(ゼロの概念)を駆使し、ユークリッド幾何学を発展させたが、
√2が 神の領域の数字と考えたギリシャ数学(神学?)の哲人たちは、
Zero(無)も無限も神の領域、人間には考えが及ばないと避けたのかもしれない。
天地創造を神の意思とするキリスト教の教義からすると、悩ましい問題ができてくる。
この世界の果てはあるか?
果てもない無限が存在するとしたら、神は何処にいる?
創造主がこの世を作ったのだから、この世に、無(ゼロ)はありえない。
しかし、その矛盾を実験で覆してきたのも敬虔なキリスト教徒。
トリチェリーは水銀柱を使い、ガラス管の中に物理的な真空を作って見せた。
ニュートンは微分積分の数学を開拓し、物質運動を数式の形で記述することに成功する。
そこには、「神」の存在を仮定しなくても成り立つ規則性があった。
26年ほど前、ニューヨークで購入したカメラ。
改めてカメラを手にし、レンズカバーに記された∞Stylusの文字を読み、おどろている。
面白い、刺激的なネーミングのカメラ、果たして何が撮れるのだろう?
夜空に向けてもブラックホールは撮れないだろう。
接写しても素粒子の世界は撮れない。
せいぜい 人間の肉眼で見える世界だけ。遠くの山や海とその風景、接写しても花や昆虫の類。
でも、なにか∞(infinite)とStylus(先端、ゼロ)を暗示できるもの/ほのめかすもの・・・・撮れるかもしれない。

心を写せるカメラなんてないのに、写心という言葉を使いたくなるらしい。
心を写す? それは言葉遊び。「君はピンクの象をみたか」のたぐい。
科学と技術で組み立てられたカメラに、そのような機能は組み込まれていない。

一写入魂で写真を撮る・・・・心を込めて撮るのは賛成だが、カメラマンの魂がその写真に写りこむことはないと・・・・冷静に判断したほうがいいだろう。

19世紀末になると、ゼロへの旅は新たな事象にぶつかる。
不確定原理・・・・最初は色温度だった。
色温度を正確に記述できる式が見つかる。そこにh(プランクの係数)があった。
hは量子論の世界の門を開ける。
量子論は科学か思想か・・・といえば思想(考え方、捉え方)に近いかもしれない。
量子力学の作用する世界では、粒子の位置と運動(速度、方向)を同時に正確に知ることはできない。
位置が判れば、運動は確定できず、運動を正確に知ろうとすると、位置がわからなくなる。
それを記述するのに波動方程式が提唱された。
摩訶不思議だが、立派な科学用語、それなりの権威もある。
波動方程式、キャッチーな名前、利用しない手はない。
セラピストと称する人物が「互いの心を共感させましょう」と誘っても、
ありきたりの文言では陳腐すぎて関心を寄せない。
難しい科学用語を交え、「心の波動を合わせましょう・・・・」と語ると、なるほどと思う人(信者か?)が現れる。
漫画では「波動砲」なる武器も描かれるようになる。

人間が直接経験できる世界は0.1mm~40kmくらいの世界。
無限に小さなゼロの世界も、無限に大きな世界も経験できない。
無限に小さな、あるいは大きな世界は、神の世界に近づく(物理学者は神の存在を仮定しなくとも、数式で記述できると思っているが)。
そこで交わされる言葉には 覚悟がなかったら、近づかないほうがいいだろう。
生半可だとだまされるだけ。
また、まじめにつきあったら頭がおかしくなる危険性もある。

小生 歳をとりすぎた、まじめに付き合い 理解を深めようと
図書館に通い入門書を借りて読んではみるが、ボケ頭が追いつかない。
ただ、∞(無限) Zero(0・・・・先端、点、ポイント、Stylus)という単語にはすぐに反応するようになった。

カメラのネーミングは面白いし、使っても楽しい・・・・ストロボが壊れていなければだが。
フィルムは、硬調現像液(Ⅳo)を使って現像してみた。
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- 2018/06/21(木) 09:07:59|
- 散歩
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