この3年 家の周りを散歩する生活になっている。
同じ道を、同じように歩き、眼に付いたものをカメラに収める生活が続く。
このスダジイの樹の下も、幾度となく歩き、カメラに収めていた。
暗部を出そうと二段現像した。現像オーバー、濃度の高いネガを得る。
太陽の当たる家の壁を考えたら、明るい部分はf:11/500秒だろう。(ISO:200)
暗い樹の葉の部分を潰さないようにするため4~5絞り分 露光を増やしてシャッターを切った。
できた露光オーバーネガを減力処理してみた。
幹のテクスチャーを出すなら、軟調現像液でなく、硬調な現像液で処理すべきだった。
光のダイナミックレンジが広い場合には、軟調現像液で処理するのが良さそうだ。
今 開発中の二液現像のテストで撮影したもの。
被写体の光のダイナミックレンジは広い。
現像の上がったネガは、くっきりとした解像感もあり、意外と銀粒子は目立たない。
二液現像法、最適化できれば いい現像法になるかも。
しかし、現像液や現像法はテクニカルなこと。
写真の「主たる」ものではない。
一番必要なのは、この樹を表現するなら、どう撮ればいいのだろう?と考えること。
技術(テクニカル)は、その後を追うだけ(従)。
まだ、これがこの「スダジイ」だと呼べる写真を撮った気になれていない。
だから、フィルム写真は面白い。
まだ挑戦できる。
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2022/08/12(金) 20:32:02 |
フィルムの眼
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二液現像法は 80年以上昔に開発された現像法で、
昭和10年に発行された写真全書「アルス最新写真大講座」11巻にも、その説明がある。
5つの二液現像法が列記されていたが、
5番目に紹介した「現像主薬とアルカリとを別に作っておく場合」が最も効果的として詳しく紹介されている。
現像液
第一液
水 200cc
メトール 1g
無水亜硫酸ソーダ 2g
第二液
水 200cc
無水亜硫酸ソーダ 2g
無水炭酸ソーダ 2g
露光した乾板を第一液にいれると、1分くらいすれば画像が淡く見える。さらに30秒から1分間その液におき、
しかる後、一寸通して(水にくぐらせること)第2液に浸す。
(ネガの)調子がよくなったところで現像を打ち切ればいい。
当時は オルソタイプのフィルム/乾板が主だったので、暗室内を赤い電球で照らし、皿(バット)現像をしていた。
乳剤の性質もかなり現在と異なっていたようだ。
第一液は、D-23で代表される軟調現像液の配合に似ている。
この現像液で、途中まで現像して、その後トーンを整えるため現像主薬を含まないアルカリ液を使用する方法だった。
いまでも使う人がいるようで、ニ浴現像法とか、シュテックラー式2浴現像法としてブログでも紹介されている。
第一液は、数分浸すだけ。浸す時間はかなりアバウトな記述。(飽和すれば それ以上の濃度にはならないというイメージだろう)
現像タンク内を目視できないので、直接確かめることはできない。
2液目の処理時間もかなりアバウト、乳剤内の現像成分がなくなれば、現像はストップする。
そのまま適当に放置しておけばいいという。かなり手軽な方法のように思える。
2液目の現像効果が喧伝されるので、現像の進行は二液目で起きるとイメージしてしまう。
何回も繰り返し使えること、(第一液の劣化はないと思いたいのだろう)
フィルムの種類やフィルム感度にあまり影響を受けないので、使い勝手がいいとされている。
15年ほど前、試したことがあったが、第一液を何回も使えるか・・・となると、
そうでもなく、使うほど画像は薄くなり、トーンの安定性に欠けてきた。
結局 「第一液で ほぼ現像を終了させ、第2液でトーンを調子を整える」が結論だった。
10本くらい現像したと思うが、なんだこの方法と思い、すぐ使うのを止めた。
(二液現像の亜流、二段現像法を開発し、使っているが、特殊な効果を狙った現像法。)
現像が、どういうメカニズムで進むのが分らないまま、
すごい現像法として 使う人がいるように感じる。
考え方は魅力的、乳剤内に残った未反応の現像液が
低照度の銀塩部分の現像を進行させ、豊かなトーンのネガを作る。
「講釈師、見てきたような嘘をつき」にならないよう、検証可能なエビデンスが必要だろう。
すくなくとも、戦前の「アルス最新写真大講座」では、
第一液でも、現像は進むとしている。
第一液を何回も繰り返し使えるという記述はない。
暗室内で 現像の進行を目視し、適当と思うところで第二液のバット(皿)へ移動させ、現像を完成させるのが二液(浴)現像法、
乳剤の薄い、そして乳剤の構造(架橋構造技術の進歩)も違うフィルムに、
昔の二液現像法をそのまま適用すのは無理があると思う。
(ネガに浸しただけなので、第一液の品質の変化はほぼなく、何回も使えると思いたいのは願望で、エビデンスのある話になっていない。願望か事実かはっきりさせるべき。)
フィルムの乳剤の構造は戦前と異なり、乳剤の厚みも薄くなっている。
二液現像を行うなら、現代のフィルムに合わせた方法を探すべきだろう。
第一液と第二液に分けたことで、検討すべき項目が増えている。
第一液と第二液の効果を分けて評価するため、現像操作も煩雑になる。
テストピースを30個作ったが、まだ、条件を掴んだわけではない。
一応、できそうな方法が見つかったので、Fomapan100フィルムを使用し、テスト撮影してみた。
(A)液は 現像成分を含んだ液。(B)液は 現像成分を含まないアルカリ水溶液。
メトール、ハイドロキノンなどの現像成分を含んだ液は、pH7以上で現像性を示す。pH6以下になると、殆ど現像性はなくなる。
(Af)液のpHは6以下、pH5.5近くに調整した。(B)液は、Boraxをアルカリ成分にし少量の亜硫酸ソーダとKBrを加えている。
(Af)液は現像性がないので、(Af)液に浸す時間を4分とし、よく攪拌し均一にフィルムに浸透するようにした。
処理時間は2分もすれば充分だと思うが・・・まだその時間を確定する実験は完了していない。
(Retro系フィルムでは2分では不充分、6分くらいか・・・)
4分後、(Af)液を切り、水で洗うことはせず、(B)液に交換し、攪拌せず放置する。(現像むらが 起きるかと心配したが、そのようにはならなかった。(B)液の処理時間を延ばすと、更にネガのUp濃度は上がるが、「被り」も増加する。
処理時間を6分とした。Retro系では被りはかなり抑制できたので15分まで延ばせた。
操作は ①水洗浄→②(A)組成から現像成分を除いた液で安定化、処理1分程度→③(Af)処理4分→④(B)現像6分で 1サイクル
再び①に戻り、同じ操作を繰り返す。
一回ではネガが淡く無理だった。
結局7回のサイクル現像となった。
一回の二液現像で求めるネガ濃度になるだろうか?
第一液に現像性を持たせない限り、(今までの実験結果から、)それは難しいと思う。
第一液に現像性を持たせない、この方法こそ二液現像法のコンセプトに従っていると思う。
ネガに浸透した現像主薬で現像した結果です。
ブログ等、ネットで喧伝された「シュテックラー式2浴現像法」ではありません。
違い分りますか?
どんよりと曇り、ものにコントラストのない日だったが、ネガのアキュータンスは高いと思う。
エッジの立った、すっきりした写真になっている。
一部を拡大してみた。
この方法でも エッジが立ったネガになった。
一回現像の「シュテックラー式2浴現像法」では無理だと思う。
濃度のあるネガを得るためには7回のサイクル現像が必要だった。
これでは煩雑すぎて、使いにくい。
2回で減感現像、3回で中庸なネガとなり、4回で増感現像になる条件を探そうと思う。
現像主剤の物質収支を正確に測定できるようになったら(定量分析)、
現像のメカニズムに更に一歩踏み込め、
2、3回のサイクルで可能か判断がつくのですが・・・
機器分析装置を、持っていないのが残念。
2022/08/09(火) 12:24:03 |
フィルムの眼
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五反田周辺の光景。
まだ日は高いが営業中。
駅前の歩道を逆光で狙う。
例年 広場の花壇にひまわりが植えられる。
まだ開花していなかったが、一本だけ飛び抜けて成長が早い。
ひまわりを逆光で撮るなら、
ガード下の暗がりをバックにフレーミングしたいところだが、
35mmの広角レンズでは、収まらない。
太陽の光が直接レンズには入らないよう注意して近づきフレーミングしたが、
レンジファインダーカメラでは不向きなフレーミング。
パララックスのない一眼レフで行うの普通だろう。
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二液現像法のテストを行っているが、要素が多くて、ちょっと足踏み状態。
乳剤の薄さが、この方法を複雑化し、煩雑な操作になっている。
現像液(A)だけでなく、促進液(B)の配合も検討しないと、
アキュータンスのいいネガは得られないようだ。
夏休みの自由研究にはもってこいだろう。
2022/08/07(日) 11:09:35 |
散歩
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日本海側から来る飛行機は、銚子沖の海に抜け、羽田に着陸していたが、
発着回数が増えたため、東京上空から直接羽田に入る空路が設定されるようになる。
コースは複数用意されているようだが、一番内陸を通るコースは、
大崎から百反坂上空を通り、三ツ木通りを横断し、勝島運河上空を飛んでいく。
散歩にでると、飛行機をよく見かけるようになった。
百反通りで撮影した飛行機、三ツ木通りから区役所上空を通過していく。
35mmの広角レンズで撮影したが、かなり大きく写る。
大崎のビジネス棟ThinkPark近くで見かけ、撮影した。
大崎警察署近くの上空を飛んでいた。
大崎駅東口近くのビジネス街、山の手線の内側を飛んでいた。
青物横丁付近から東京湾へ出るコースらしい。
望遠レンズで機体を切り取ると、どこで撮影したものか分らなくなる。
飛行機そのものが好きな人なら、それもありだろうが、
散歩にカメラを持ち出し、気ままに撮っているだけ。
記録だからと広角レンズをつけて撮っている。
Retro400Sを軟調な現像液(Ⅵsx)で現像すると、白飽和、黒潰を防止でき、トーンの広い風景の撮影に向いている。
アキュータンス(フィルムの精細感)も、いいように思う。(確信はまだ持っていないが・・・)
トーンは、フィルターを交換することにより、かなり変化する。特にオレンジフィルターや赤外線フィルター(R72)を使用すると、
トーンが崩れ、時に写真に面白い効果がでる。
写真で重要なのは、カメラでもレンズでもなく、フィルムだと思えるようになった。
ライカでなければ、キャノンでなければ、ニコンでなければ写真が撮れないということはない。
ツアイスのレンズでなければ、ライカでなければ、ニコンでなければ、キャノンでなければ 写真にならないという訳でもない。
機種の違いがあったとしても、写真にはごく僅かな差しかでないだろう。
「もの(ハードウエアー:カメラとレンズ)」に拘るより、フィルムに拘り、現像液に拘り、現像法に拘った方が、
写真のトーン、精細感の表現範囲は広い。
フィルムは、簡単に結果を得られるものでないので、
簡便さが売りの時代には逆行している。
奥の深い趣味だと思うのだけど・・・先細り傾向が続いている。
先細りの市場、フィルムの入手が段々難しくなっていることが、今、小生の関心事。
2022/08/05(金) 10:15:41 |
散歩
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acuitance と言う言葉 知っていますか?
普通使う英語辞書には、6万語程度の単語が収められている。
しかし、それには載っていない。
14万の言葉を載せたWebster’s New world Dictionary of the American Language(英英辞書)にも
載っていなかった。
acuitanceという単語、もはや使う人のいない死語となり、掲載されなくなったのだろうか?
アキュータンスという言葉を知ったのは、ゾーン現像法を開発した、アンセル・アダムスの手引き書。
いかに、鮮鋭度の高いネガを得るかというなかで、盛んに「acuitance 」という言葉が使われていた。
レンズの性能を表す指標としてレンズの解像度が上げられるが、
フィルム現像では、いかに先鋭に見えるネガを作るかで、「acuitance 」という言葉が使われていた。
当時は 4×5、あるいは8×10(いずれもインチ)の大きなフィルム(乾板)で写真を撮っていた。
乳剤の層は厚く、印画紙にネガを密着させて焼き付けるのが主流だったので、フィルムの粒状性は特に問題にはならなかった。
この時開発されたのが、二液現像法。
しかし、戦後になり、小型カメラが主流になると、写真は、印画紙に大きく引き伸ばすようになる。
ネガのアキュータンスは、粒状性とトレードオフの関係に有り、
アキュータンスのいいネガは、引き伸ばすと、銀粒子のザラつきが大きくでる。
アンセル・アダムスも戦後になると、ブローニー判以下の小さいネガ現像では、二液現像法を使用しなかったようだ。
現在の白黒フィルムは乳剤層が薄くなり、銀の含有率も少なくなっている。
昔の二液現像法の条件で現像しても、良い結果は得られない。
だめだと分ると、でもそれは昔の条件に固執しているから、
難しいなら、それを どうにかして乗り越えようと考えるのが、化学を学んだ者の本能。
もう一度、二液現像法を見直してみようと思った。
個々の薬品の機能の分析・評価し、条件を見極め、それに基づき最初のテスト撮影を行った。
「acuitance 」とは、写真がいかに先鋭に見えるかを指す言葉。
白黒の境にエッジが立つと、写真は先鋭に見える。
難しいのは、同時に粒状感をあまり出さないようにすること。(トレード・オフなので 其処が難しい)
PCのモニター画面では わかりにくいので、文字の部分を等倍まで拡大した。
文字にエッジが立ち くっきりしている。
二液現像法も 条件の最適化を行えばかなりいい結果を得る。
この方法、市販の現像液では実現は難しい。
自分で薬剤を扱い、現像液(A)と活性化液(B)を作る必要がある。
まだ 試行錯誤の状態で、何が重要要素で、どうコントロールすべきか、不明な点は多い。
ちょっと再現性に欠けていることもあった。
それ(メカニズム)が判明すれば、実際に使えるよう改良できるだろうが・・・今のところ操作が煩雑で、汎用な現像法にはならないと思う。あくまでも趣味の領域。
白黒の境界にエッジが立つようにするのは、フィルム現像では難易度はかなり高い。
旧来の二液現像法では、今の乳剤層の薄いフィルムでは実施が難しいと判断し、
そのため開発したのが、二段現像法だった。
エッジを出すことには成功するが、トーンのコントロールは難しい。
(2022年6月6日、建設用重機の文字を写した二段現像法の記事を載せている。)
Fomapan100フィルムだと(Ⅰaf)現像液で処理すると、エッジの立ったネガが 得やすかった。
(2021年2月23日の記事参照)
でも デジタル写真ならどうだろう?
レタッチソフトでエッジの検出はできる。
エッジ検出し、それを元の画像と重ね合わせれば、エッジの立った写真はできる。
もっと手軽にするならアンシャープ・マスクを解除する。
あるいは、シャープネス調整をクリックし
その人が、好ましいと思えるよう調整しても、
エッジの立ったアキュータンスな写真をつくることができる。
すごい時代になったと思う。
小生も、しばらくそれで遊んでみたが・・・すぐに厭きてしまった。
いまは、そんなことする気にもなれない。
二液現像法まだ、もう少し伸びしろがありそう。
もうちょっと 検討を進めるつもりでいる。
2022/08/01(月) 15:12:32 |
フィルムの眼
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